途方に暮れなずむ

途方に暮れていたり、いなかったり。

長い旅

沖縄から届く荷物を待っている。どんなルートでやってくるのか追跡をかけてみると、なんと羽田にいた。てっきり大阪か福岡あたりを経由するのかと思っていたので、驚いた。なかなかの長旅である。無事たどり着いたら、熱烈歓迎したいと思う。

 

仕事帰りにドン・キホーテに行く。

何がどこに置いてあるかわからなくてやたら疲れるので、普段なかなか近寄ることはないが、年に2回ぐらいは意を決して迷い込むことがある。

今回の目的は、ツーブロック部分に使う小さめのシェーバーを探すこと。まずは、ヘルス&ビューティー的なフロアを歪なかたちに2周して間違いに気づき、家電フロアに移動。よしよし、シェーバー的な機械群を見つけたぞ、と思ったが、鼻毛用、ヒゲ用、VIO用、ケツ毛用(!)などなど多種多様なメンツを前に立ち尽くす。私のツーブロックをいい具合にトリミングしてくれるのは一体どれですか?ただただその一心で、出来るだけ小回りがきいて、安価なものを探す。正解かどうかわからないが、ヒゲ・モミアゲ・えりあし用という1,900円ぐらいの物にした。たぶん、大丈夫なはず。

レジを求めて1階まで下りた後、まんまと食料品トラップに引っかかる。ふと気づけば、カゴを手に、みかんの缶詰を求めて歪なかたちに3周もしてしまっていた。みかんの缶詰を見つけるまでに、いつの間にやらカゴの底が見えなくなった。この手の店ではフロア内でフリーな店員さんに出くわすなんて極めてレアなこと。彷徨うのにうんざりするあまり、いっそその辺りの一般のお客さんに缶詰の在処を尋ねたくなるのを必死に堪える。これをやってしまうと、なんて言うか、もう、人生の次のステージに上がってしまうような気がするから。フロアの隅の隅にてようやく缶詰を見つけ、くたくたでレジに並ぶ。

 

夏休み明けに短くなった髪で出勤したら、面白いぐらい皆の驚き顔を堪能できた。中でも、おでこの成長が著しくて潔く頭を丸めたC氏の反応が面白かった。私が「違うのを被ってきたよ」と伝えると、「いいじゃん。どこで買うたん?俺にも貸してぇや」ときゃっきゃ言っていた。潔いのは、良いことだ。

夏にさよなら

夏が終わる。正しくは、夏休みが終わる。

先週水曜日から遅ればせながらの夏休みを消化していた。案の定、雨井さんと会うことは叶わなかった。予定らしい予定が一切ないので、いくつかこさえてみた。

  • 髪を切る。
  • 映画を観る。
  • 中くらいの人の部屋を片づける。
  • 中くらいの人のワクチン接種(1回目)

こんな感じか。文字にしてみると、実感以上に呆気ない。

 

散髪のこと。美容師さんに「もうたまらん。ショートにして欲しい」とオーダーしたら、「すでにショートです」と言われた。そんなわけで、望み通りに、より一層ショートになった。カラーやパーマで痛んで指が通らなかった毛先とさよならできた。ただ、以前に比べてセットが必要となった。やや長めに流した前髪とか、正直、荷が重い。早くも長続きしない予感がしている。

 

映画のこと。公開日が2回目のワクチン接種と重なり、その後だらだらとお預けになっていた「孤狼の血 LEVEL2」をついに観に行って来た。柚月裕子さんの原作シリーズがたまらなく好きで、やはりこれは観ておかねばと思い立った次第。とにかく鈴木亮平がおっかない。その残忍さたるや、もはや人間じゃないんじゃなかろうかというレベルで、西郷どんとかテセウス父さんが跡形もなく消え失せた。演技はもちろんのこと、本人が提案したというモミアゲ喪失ヘアが不気味さを助長していて、まあ見事だった。西野七瀬も「あなたの番です」のあの子とは気づかないぐらいに難しい役どころを堂々と演じていてびっくりした。

久々に男くっさい映画を観て、欠如していた栄養素を補えた気がする。

とりあえず、「世界はほしいモノにあふれてる」はもう楽しく観れないかも知れない。

帰宅後、限定プレゼントのカード4枚組を開けてみたら、ものの見事にハズレばかりで(失礼!)笑えた。極妻とか、その辺りの人々。

 

中くらいの人のこと。賽の河原の如く部屋のあちこちに積み上げられた古い教科書その他もろもろを処分する。大切なものが紛れ込んでいない保証はないが、本人がやらないので仕方あるまい。潔くさよならする。

ワクチン接種の際、中くらいの人の腕からたくさん血が出て不安になる。医師に「あんまり注射する機会がないのかな」などと言われながら、しばらく腕を押さえて止血される中くらいの人。自分がワクチンを打たれるのももやもやしたが、中くらいの人の付き添いではそれ以上に気持ちがざわついた。幸い、その後熱が出ることもなくてよかったけれど。来月は2回目が控えている。副反応がひどくなければいいな。

軟骨は、突然に。

どうやら軟骨が生えてきた。

植物に芽やら根やら葉やら変化が現れるのは誠に喜ばしいことではあるが、私の右手首に軟骨が生えたところで、全くもってめでたくない。

最初に小さな隆起を発見した瞬間は、虫刺されか何かだと思ったが、これが一向に痒くない。そして、手首の動きに合わせて、大きな骨(たぶん橈骨)に従うようにして移動する。例えて言うなら、ラバライト的なぬるりとした滑らかな動き。

 

 

押しても痛くはないが、何かと目が行く場所なので、気にはなる。

そういえば、働き盛りだった父親が、ある日、首から肩にかけての痛みを訴えて泣き出したことがある。普段とても気難しい人の突然の豹変っぷりに恐れ慄いたのを覚えている。そうして、病院を受診したところ、発覚したのが軟骨であった。仕事中、いつもとっている前傾姿勢がよろしくなかったらしい。手術で取り除くとなると少々デリケートな部位ゆえ、彼はウィズ軟骨の生活を選んだ。痛くてたまらない時には鎮痛剤に頼るのである。

さて、私の軟骨はどうしたものか。先日、中くらいの人に軽くカミングアウトしたら、随分とひかれた。今は小さな軟骨が、今後すくすくと成長し、ついには私の皮膚を突き破るのではないかと、気が気でないらしい。逡巡。たしかに、あり得なくはない。が、例えば軽い気持ちで受診して、その場で「じゃ、さっさと削っちゃいますか」という展開にも耐えられそうにない。ここはとりあえず、父に倣ってのウィズ軟骨である。しれっとした顔をしながら、実はビクビクで、痛みが生じていないかセルフ触診を日課にしていこうと思う。

クリスマスになったら、いい大人である私がサンタさんにプレゼントをねだるのもアレなので、軟骨の消滅をお願いするのもアリかも知れない。

 

仕事帰り、2駅手前で電車を降りて、配送業者の営業所に立ち寄る。お客さんの多い時間帯、恐縮しながら明日配達予定の荷物を探してもらって受け取る。

小さな箱を抱えて、川べりの遊歩道を歩く。前を行く小学生3人組が横並びでよーいドン!→適当にゴール→そしてまたよーいドン!を繰り返している。他の歩行者を全く無視した小学生らしさ。この上なく鬱陶しい!上等だ!たぶん、来年のあんた達はもうそんなことしてねぇわ、と、思いつつ、ピンクがかった空の下、てくてくと行く。

夏のピークは去ったけれども、まだ暑い夕暮れ時。

風まかせ

休日。洗濯機の掃除をしたり、髪を染めたり。腰を落ち着けて、編み物も。昨シーズンからの持ち越しの超極太糸で編んでいたプルオーバーは、どうにも収拾がつきそうにないので、思い切って一旦中止した。一転、中細糸でシンプルなプルオーバーを編み始めている。なんせ細い毛糸なので、なかなか進まないが、毎日少しずつ針を動かしている。今は、後ろ身ごろの袖つけ位置を少しばかり過ぎたところ。道のりはまだ長いよ。

お昼前、中くらいの人が注文していた書籍が届く。郵便受けに入らなかったとのことで、配達の人が持って上がってきてくれた。はるばるイギリスから旅して来たレシピ本。スマホの自動翻訳アプリだか何だかを駆使して解読するのだそうだ。熱い。

 

さて、ここのところ、グラキリスの様子が気になっている。塊根部分がどうも柔らかくなってきているのではないかと。ブヨブヨとまでは言わないが、ところどころ、なんらかの球技に使う小さめのボール(全くもってスポーツに縁のない人間につき、とんちんかんな言い方でお恥ずかしい限り。イメージ的に、硬式野球かテニスあたりか、な。)ぐらいの弾力がある。根腐れか、水不足か。実際に根の状況を確認したい気もしたが、細い根をぶちぶち切断しかねないので、そこは我慢。根が未発達で十分な水分を吸い上げられないのだろうと推察して、一晩腰水させてみた。そして、今日は一日、ベランダで日光浴したり、雨宿りしたり、風に吹かれてみたり、つまり自然にお任せ。夕暮れ時に触った感じでは、少し硬さが戻ったような。あくまでも、ような。まだしばらく気掛かりは続きそう。涼しくなるまでには回復させておきたいところ。

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グラキリスの腰水姿を写真に収め損ねたので、雨上がりのグラウカを。

ホラーなベアー

中くらいの人がすうすうと寝息を立てて眠っている。なぜか右手を左胸の上に置いていて、まるで国に忠誠を誓うアメリカ人みたいだ。

その傍ら、と言っても完全に布団から外れたところに、何やら物体が横たわっている。くまのあみぐるみだ。

中くらいの人は、目が堅い赤ん坊だった。とにかく眠らない。今はぼんやり系フェイスの彼だが、当時は小さな顔に大きな眼をきらっきらさせていた。常に。

余談になるが、ベビーカーを押していたら、見知らぬ人にいきなり「お父さんはブラジルの方ですか?」と声をかけられたことがある。(生まれてすぐの黄疸対策で、紫外線に当ててこんがり焼けていたため、ちょっとしたビーチ・リゾートっ子風効果もあったと思われる。)

話を元に戻す。たまに電池が切れたようにすうと眠るのだが、驚くほど高性能の体内時計を持って生まれてきており、きっかり2時間で目を覚まし、泣き喚く。

ふたたび余談になるが、彼がこの世に出てきた瞬間、手術台の上の私の口をついて出たのは「(うるさくて)すみません」という言葉だった。人間の声で私の鼓膜をあれほどビリビリと震えさせたのは、後にも先にも彼の産声だけだ。世の中のその他の音が一切聞こえなくなるほどの威力を持つ。

ふたたび話を元に戻す。くま。そう、そんな事情があって、誕生したのが例のくまである。大きなあみぐるみを作って、添い寝させようという魂胆だ。なんせこま切れの時間で家事をこなし、さらにその隙間時間にしか編み針を持てないので、まるで地道に脱獄用の地下トンネルを掘り進める囚人のようであった。見回り(彼の目覚め)の時に編み物に没頭していようものなら、処罰(鼓膜ビリビリ)だ。

とにかく、そのようにしてあのくまは出来上がった。当時はネットショッピングなどしていなかったし、材料は近場のお店で手に入る物限定。時間をかけてじっくり悩むこともできず、選んだオーガニックコットン糸はベージュで、仕上がりは妙に艶めかしく、目玉にしたボタンは赤と緑の縁取りで、なんだか穏やかではない。

結局、私の企みは失敗に終わった。あんなものにだまされる赤ん坊ではなかったのだ、中くらいの人は。添い寝はおろか、戯れもなかったように記憶している。その後、何度か引っ越しを繰り返したのもあって、くまは私の手によって何度か古着用のごみ袋に突っ込まれた。けど、その度に中くらいの人の手によって元に戻されている。戯れもしないのに。

そういった経緯で、もはや寝具だか壁紙だか床だかの一部と化していたあのくまが!なんと!中くらいの人とコラボしているのをはじめて見たのだ。先般の大雨以来、雨音の幻聴でなかなか眠れず、夜中にごそごそしていたところ、うすら闇に、バレリーナのごとく高々と上げたくまのひょろ長い片足が見えた。そして、そこに中くらいの人の頭が乗っかっているではないか!明らかに事故であるが、ひたすらに地下トンネルを掘り続けていたあの頃の自分が報われた気がした。しばらくすると、中くらいの人はあっさり寝返りを打って、ものの見事にコンビは解消。苦節十何年、できたら写真にでも収めたかったが、面倒くさいので瞼に焼きつけるに留めた。

なお、このことは中くらいの人には伝えていない。私が時々、ひとりでむっつり反芻するネタとして大事にしていこうと思う。

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↑ホラーなベアー。腕枕ができるように、胸から腕にかけてマッチョな仕様になっている。脚には原因不明の浮腫みが見られる。皆が寝静まったあと、副業で何らかの立ち仕事をしているのかも知れない(とは言え、本業の添い寝が廃業状態のため、そちらが本業の可能性大)。つぶらな瞳が、隠し持った狂気をチラつかせている。

よいこととよくないことは、順番に

緊急事態宣言のおかげで、また当分の間、雨井さんに会えない。予想はできていたことなので、やっぱりな、という心持ちだ。

いいこともあった。中くらいの人のワクチン接種予約が完了したのだ。まだまだ先になるだろうと思っていたが、案外するりと決まった。接種会場は近所ではないけれど、週末なので問題なし。(あるかないかわからないが)修学旅行の前に、2回目の接種も完了できる予定。少し、肩の荷が下りた。

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↑ご褒美は、中くらいの人特製かき氷。

 

夏の終わりに差し掛かり、うちで一番ワイルドな子であるギラウミニアナにカイガラムシが発生した模様。どこからかやって来て、ターゲットを決めると、自らの手足を落としてまでロック・オンするという、執念の塊のようなカイガラムシ。ちゃっかり仲間を増やしつつ、末永く植物の養分を喰いものにする、とんだ特攻野郎だ。名前にカイガラとついているだけあって、成長すると、殻のような装備が功を奏して、害虫駆除薬等が効きにくくなる。初夏にアデニウム・アラビカムに発生した時は、一匹一匹地道に爪楊枝で駆除したが、今回はなかなかうまくいかないため、薬剤を使うことに。うまくいけばいいのだが。

休日に思うこと

いよいよ何度目かになる緊急事態宣言がこの街にも発令されることになり、それとほぼ時を同じくして、中くらいの人の学校が再開。

テレビを見る限り、修学旅行は取り止めになる可能性が高そうだ。本来なら去年行くはずだった修学旅行は、ものの見事にオリンピックとコロナに翻弄された。学校の先生方も生徒らのことを思ってあれこれ奔走してくださった(おそらく、いまだ現在進行形)と聞くが、そろそろ結論を出すべき時期だろう。幸か不幸か、中くらいの人は私に似て、学校行事に心躍らせるタイプではない。「別になくってもええ」などと言ってはいるが、だからこそ、数少ないそこそこ大きな学校行事のひとつとして経験できないのは何か大きな欠落になりそうな気もする。

そんなことを思いつつの休日。電話をかけたり、ネットでアクセスしてみたり、そして、その合間に掃除機をかける。相も変わらず、まだ当分起きそうにないミラクル待ち。どうやらせっかく打ったワクチンも、接種から3ヶ月以降、抗体の量が随分減ってしまうらしいので、中くらいの人は、案外丁度いい時期(受験等々)にワクチン接種にありつけるのかも、と思いはじめた。日々、淡々と予約活動に勤しみつつ、その時がその時なのだと自分に言い聞かせる。(もちろん、このままその時がやってこない可能性も排除しない。)

ラクル待ちはミラクル待ちとして、せっかくの休日を楽しむことも必要ということで、編み物に取り掛かる。休業していた分を取り戻すかのように、90's MIXを聴きながら、裾からずんずん編みすすめ、頭を通す穴が出来た。

それにしても、オザケン、懐かしすぎる。いまだに音を聴けば、途端に痛快ウキウキモードに切り替わる。嗚呼、(今思えば)青春の日々よ。甘酸っぱいにも程がある。時に浮かび上がってくる恥ずかしいエピソードを頭から追い出すべく、頭をぶんぶん振りながら編み針を操る。

そして、ふと手を止めて、思う。これは、ひょっとして、毛糸が足りなくなるのではないかと。13玉あった毛糸玉が、あれよあれよと消えてなくなり、なんだかとても心許なくなってきた。追加で買わないとだめかなあ。どうにかならないかなあ。悶々。

気晴らしにベランダに出ると、冬型の亀甲竜が細い蔓を伸ばし、小さな葉をつけているのを見つける。一旦休眠に入るかと思っていたが、このままシーズンに突入するのか。なんだか賑やか。

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