途方に暮れなずむ

途方に暮れていたり、いなかったり。

読み物

さよならの気配

今シーズン唯一のセーターを仕上げたら、ぽっかりと穴があいた。何に?余暇の過ごし方に?はたまた私の心に?そんな感じの空虚。あれだけ放ったらかしで時間だけかけた一着。でも、手を離れると、とても寂しい。 積読してた三國万里子著「編めば編むほどわた…

散り散りになったり、くっついたりするもの

佐々木譲『ユニット』読了。 物語は、母子殺害事件(モデルとなっているのは、実際に起きた光市の事件)とDVを軸に繰り広げられる。17歳の少年に妻子を殺された真鍋と、警察官である夫からの暴力に耐えかねて幼い息子を連れて家を飛び出した祐子。とある出来…

そう簡単には燃えつきないのが人間である

唯川恵『燃えつきるまで』読了。 あらすじ 住宅メーカーで着々とキャリアを積んできた怜子。5年の付き合いになる恋人は、怜子との結婚を望んでくれているが、仕事との兼ね合いで延ばし延ばしになっている。仕事もプライベートも充実していたはずなのに、ある…

気晴らし

曇天続きから久々の散歩日和。出発した頃には上着の前をはだけさせようと躍起になっていた寒風も、お昼近くになるとすっかり鳴りを潜めた。 毎年、何を贈ろうか悩むとーさんとかーさんの誕生日。今年は、ふたりまとめてひとつ、マッサージ機をプレゼントする…

描き続ける理由

貫井徳郎『壁の男』読了。 栃木県のとある集落には、奇妙な光景が広がっていた。商店や民家の壁という壁に描かれていたのは、どぎつい色に彩られたあまりにも稚拙な絵。この集落の様子はSNSで話題となり、フリージャーナリスト・鈴木は取材に赴くが、肝心の…

そんなつもりでは

貫井徳郎『乱反射』読了。 あるひとりの幼児の死を巡る物語。 登場人物は、互いに何の繋がりも持たない、ごくごく普通の小市民たち。誰も幼児を死に至らしめるつもりはなかったが、ひとりひとりの小さな罪が連鎖して悲劇は起きた。 どこにでもありそうな日常…

たたかう前期高齢者

内藤了『メデューサの首 微生物研究室特任教授 坂口信』読了。 定年退職ののち特任教授として帝国防衛医科大学に勤める微生物学者の坂口信。穏やかな日常は、亡き恩師の住まいを訪れたことで一変する。 突如降って湧いた新型ウイルスに感染後、ラットは互い…

神も仏もない

道尾秀介『雷神』読了。 埼玉で小料理店を営む藤原幸人の元にかかった一本の脅迫電話。彼は、30年前と15年前の二度に渡り、あまりにも辛い過去を抱えていた。そんな彼がようやく手にした平穏な日々に、突如さす暗い影。愛する一人娘・夕見を守るため、捨てた…

デオキシリボ核酸というらしい

『筋読み』読了。 第16回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞作品。 女性モデル殺害の罪で出頭し、起訴目前の商社マン。同じ頃、交通事故に遭った直後に現場から連れ去られた少年。このふたりが同じDNA型を持つことが判明した。殺害現場で証拠として採取…

あとは若い方々にまかせて

『夜は短し歩けよ乙女』読了。 知人に勧められて読んでみたものの、ファンタジーが苦手な私には入り込めない世界観。空を飛んだり、3階建ての電車が登場しても、怯まないハートと柔らかなアタマが求められる。 終始ガラス越しにカオスな作品世界を眺めるも、…

月がとっても綺麗ですね

山田詠美『血も涙もある』読了。 有名料理研究家であり師匠でもある沢口喜久江とその夫・太郎のあいだにするりと入り込んだ助手の桃子。「私の趣味は人の夫を寝盗ることです」という書き出しから始まり、lover, husband, wifeの3つの視点を順繰り3周、people…

めくるめく極彩色の世界

原田マハ『#9(ナンバーナイン)』読了。 原田マハさん。以前から気になっていた作家さんではあったが、果たして自分が美術がらみの小説を読み進めることができるかどうか甚だ疑問で、今回ようやく初チャレンジに至る。実際に目にしてもなかなか理解するとこ…

信じることの危うさ

堂場瞬一『雪虫』読了。 「仏の鳴沢」の祖父、「捜一の鬼」の父に続き、刑事という職についた鳴沢了。誰からも尊敬されていたはずの祖父、天職だと信じて疑わなかった刑事職-今まで信じていたものが、新興宗教の元教祖が殺害された事件をきっかけに崩れてゆ…

ついたての向こうに

青山美智子『お探し物は図書室まで』読了。 特に前評判等目にせず、耳にせず、書店の話題本コーナーでたまたま手に取った一冊。 一日に一章ずつ、大切に読んだ。読後、ひとこと「好きだわー」とぎゅっとかき抱きたくなるような、そんな感情が芽生えたのはい…

みんな、誰かの光

三浦しをん『光』読了。 『光』というタイトルを与えられながらも、全編にわたって暗さが付き纏う作品。 暗闇の中で、どうにかして掴もうとするひと筋の光。その光は、例えば太陽のように混じりっ気ない、あたたかく眩い光だろうか。いや、きっと、そうでは…