途方に暮れなずむ

途方に暮れていたり、いなかったり。

みんな、誰かの光

三浦しをん『光』読了。

『光』というタイトルを与えられながらも、全編にわたって暗さが付き纏う作品。

暗闇の中で、どうにかして掴もうとするひと筋の光。その光は、例えば太陽のように混じりっ気ない、あたたかく眩い光だろうか。いや、きっと、そうではないはず。深い闇を抱えた誰かの上辺だけの笑顔。生命と引き換えにしてでも果たしたい復讐。誰かに対して抱く異様なまでの執着などあげればきりがない。これら生きることの原動力たり得る、心に灯る屈折した光。光が光を呼び、世界を形成する。愚かで、愛おしい。それでこそ、人間。

 

光 (集英社文庫)

光 (集英社文庫)