途方に暮れなずむ

途方に暮れていたり、いなかったり。

信じることの危うさ

堂場瞬一雪虫』読了。

「仏の鳴沢」の祖父、「捜一の鬼」の父に続き、刑事という職についた鳴沢了。誰からも尊敬されていたはずの祖父、天職だと信じて疑わなかった刑事職-今まで信じていたものが、新興宗教の元教祖が殺害された事件をきっかけに崩れてゆく。忖度することを毛嫌いし、正義にしがみつく鳴沢と、一方で、盲目的に教祖を崇拝し、事件を引き起こした人々。皮肉にも双方が重なって見えることで続く重苦しいムードに、新米刑事の大西海や初恋相手の石川喜美恵が要所要所で風穴を開ける。

10作ある鳴沢了シリーズの第1作目。全編通してハラハラすることはなかったが、読み進めやすい警察小説。この初回のエンディングからシリーズがどう続くのか、気になるところではある。主人公の成長をじっくり楽しめる人向け。

 

雪虫 (中公文庫)

雪虫 (中公文庫)

  • 作者:堂場 瞬一
  • 発売日: 2004/11/01
  • メディア: 文庫