途方に暮れなずむ

途方に暮れていたり、いなかったり。

めくるめく極彩色の世界

原田マハ『#9(ナンバーナイン)』読了。

原田マハさん。以前から気になっていた作家さんではあったが、果たして自分が美術がらみの小説を読み進めることができるかどうか甚だ疑問で、今回ようやく初チャレンジに至る。実際に目にしてもなかなか理解するところまでいかない美術を、文字で読んで楽しむことができるか。実験的試み。

 

主人公の真紅が運命的な出会いを果たし、我を忘れて恋焦がれたのは、大富豪の中国人、王剣。真紅の突然の無我夢中モードにもびっくりだけれど、更に上を行くのが、王剣の繰り出す恋愛・・・いや、狙ったものを確実に手に入れるためのテクニック。くさい。くさいが、一生に一度のロマンスとしか言いようのない演出。

そして、恐ろしいのが、この国境を越えてのジェットコースター・ロマンスが、そこそこ早い段階で破綻してしまうこと。次いくよー、みたいな具合でぐいぐい引っ張られる。読んでる私が白髪増えそう。

ちなみに、タイトルの『#9(ナンバーナイン)』は、真紅が見つけた真実の愛のお相手。でも、これが最後ではなさそうなんだなあ。若いって、素敵。で、疲れる。

 

読んでいる間、私がまだティーンエイジャーだった頃に観た映画「愛人 ラ・マン」の断片が頭の片隅にちらついていた。私は主人公のジェーン・マーチの方に年齢が近く、白のスーツに身を包んだレオン・カーフェイがとっても大人に見えたものだった。

一方、『#9(ナンバーナイン)』に登場する紳士然とした中国人の王剣やデイヴィッドは30代半ば。まだ青年といってもいいぐらいだ。頭の中で勝手に作り上げていた設定を修正する必要性が生じたが、どうにもうまくいかず。

すべては大して意識しないまま、エスカレーターで運ばれるが如く歳を取ってしまった自分が悪い。そして、もうひとつ言うならば、私のまわりにはキレッキレの青年は存在しない。想像上の生き物に近い。

 

最初に懸念していた美術への造詣云々については、全く問題なし。読む者になかなか栞を挟ませてくれないほどの筆の力。先が気になって、ほぼほぼ一気読み。

 

#9(ナンバーナイン) (宝島社文庫)

#9(ナンバーナイン) (宝島社文庫)

  • 作者:原田 マハ
  • 発売日: 2009/12/05
  • メディア: 文庫
 

 

追記:

あとで、王剣は伊勢谷友介っぽいイメージでは、と思いついた。この人も残念ながら実年齢が10近く上だろうけど。私の想像はこの辺が限界。