途方に暮れなずむ

途方に暮れていたり、いなかったり。

デオキシリボ核酸というらしい

『筋読み』読了。

第16回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞作品。

女性モデル殺害の罪で出頭し、起訴目前の商社マン。同じ頃、交通事故に遭った直後に現場から連れ去られた少年。このふたりが同じDNA型を持つことが判明した。殺害現場で証拠として採取されたDNA型は一体どちらの人物のものなのか?そもそも4兆7千億分の1といわれるDNA型の出現頻度からしてありえない状況に混乱する警察を描いた小説。

蘊蓄系の記述が多めで、熱量の高い文章。途中でついていけなくなるところもあったが、物語が進むにつれ、先が気になる気持ちが勝って、週末のあいだに読み切った。

一般的に警察小説の主人公は、尖った性格の人物が多いように思う。本作の「ヨミヅナ」こと飯綱知也も然り。筋読みの才能は認められても、捜査本部から追放されるような刑事だ(←ただし、これには事情あり)。けれど、バディの新人刑事の溌剌さに自然と頬を緩めたり、まわりの捜査員に誤解されていると知ればそれを正そうとしたりと、人間らしい部分もあわせ持つ人物でもある。

肝心なDNA一致のトリックについては、最後の最後まで引っ張られた上で、ヨミヅナによる筋読みがさらっと披露される。個人的にこれが一番気になる謎だったから、どうにかもうちょっと、ところどころにちらりちらりと筋読みの欠片みたいなものを散らしてもらえなかったかなと思った。そしたら、読者の熱量ももっと高まったのではないかと。