途方に暮れなずむ

途方に暮れていたり、いなかったり。

軟骨は、突然に。

どうやら軟骨が生えてきた。

植物に芽やら根やら葉やら変化が現れるのは誠に喜ばしいことではあるが、私の右手首に軟骨が生えたところで、全くもってめでたくない。

最初に小さな隆起を発見した瞬間は、虫刺されか何かだと思ったが、これが一向に痒くない。そして、手首の動きに合わせて、大きな骨(たぶん橈骨)に従うようにして移動する。例えて言うなら、ラバライト的なぬるりとした滑らかな動き。

 

 

押しても痛くはないが、何かと目が行く場所なので、気にはなる。

そういえば、働き盛りだった父親が、ある日、首から肩にかけての痛みを訴えて泣き出したことがある。普段とても気難しい人の突然の豹変っぷりに恐れ慄いたのを覚えている。そうして、病院を受診したところ、発覚したのが軟骨であった。仕事中、いつもとっている前傾姿勢がよろしくなかったらしい。手術で取り除くとなると少々デリケートな部位ゆえ、彼はウィズ軟骨の生活を選んだ。痛くてたまらない時には鎮痛剤に頼るのである。

さて、私の軟骨はどうしたものか。先日、中くらいの人に軽くカミングアウトしたら、随分とひかれた。今は小さな軟骨が、今後すくすくと成長し、ついには私の皮膚を突き破るのではないかと、気が気でないらしい。逡巡。たしかに、あり得なくはない。が、例えば軽い気持ちで受診して、その場で「じゃ、さっさと削っちゃいますか」という展開にも耐えられそうにない。ここはとりあえず、父に倣ってのウィズ軟骨である。しれっとした顔をしながら、実はビクビクで、痛みが生じていないかセルフ触診を日課にしていこうと思う。

クリスマスになったら、いい大人である私がサンタさんにプレゼントをねだるのもアレなので、軟骨の消滅をお願いするのもアリかも知れない。

 

仕事帰り、2駅手前で電車を降りて、配送業者の営業所に立ち寄る。お客さんの多い時間帯、恐縮しながら明日配達予定の荷物を探してもらって受け取る。

小さな箱を抱えて、川べりの遊歩道を歩く。前を行く小学生3人組が横並びでよーいドン!→適当にゴール→そしてまたよーいドン!を繰り返している。他の歩行者を全く無視した小学生らしさ。この上なく鬱陶しい!上等だ!たぶん、来年のあんた達はもうそんなことしてねぇわ、と、思いつつ、ピンクがかった空の下、てくてくと行く。

夏のピークは去ったけれども、まだ暑い夕暮れ時。