途方に暮れなずむ

途方に暮れていたり、いなかったり。

中くらいの人に怒られる

朝。起き抜けに、中くらいの人のお弁当を用意しようとして、やらかす。

冷凍庫を開けようとしたところ、何かが引っ掛かった手応えがあった。少々力を込めて引っ張り開けたら、何かがぽーんと飛び出した。冷凍庫の中を確認すると、そこには、袋の口が開いたチューペット?チューチュー?(正式名称は分からないが、あの甘いジュースが透明な筒状の容器に入っているやつ。凍らせて、真ん中のくびれ部分をぽきんと折って食べるやつ)が。そして、先程ロケットの如く飛び出したっぽいチュー某は、あろうことか冷蔵庫と壁の隙間に入り込んでしまったのだった。暗闇にロケットの先端部分だけが見えている。色はみどり。青りんご味だ。手こずらせよってからに、などとぼやきつつ、隙間に雨傘を差し込んでチュー某を連れ戻そうとしたのだが。嗚呼、何ということ!コントロールを誤り、チュー某が冷蔵庫の下に隠れてしまった。その辺のものを差し入れてみるも、出てくるのは、チュー某ではなく、軽やかに踊る埃と変な汗。

私は、お弁当を作らないといけないのだ。

よし、もういい。何も無かったことにしよう。何か飛び出た気はしたが、それが何だったかはっきりこの目で捉えたわけではない。いずれ引っ越しだか買い替えだかで冷蔵庫を動かしたときに、「あれ?なんでこんなところからチュー某が!?」みたいな反応をすればいいのだ。その時には、きっと私自身、今日のことなんてすっかり忘れていて、極めてナチュラルな受け止めができるはず。ただ、その時出会うチュー某がどんな姿をしているか、そこだけはちょっと怖くもある。さわやかなはずの青りんご汁は、もはやさわやかであるはずはないのだから。

そんなこんながありながらも、無事?お弁当を作り終えた。

のっそり起きてきた中くらいの人に、何とはなしに今朝の出来事を軽くダイジェストでお伝えしたところ、キンキンのチュー某と同じくらいかそれ以上に冷たい目で懇々と説教された。中くらいの人のことだから「やばいね」程度のコメントでスルーするかと思っていたら、意外や意外、彼の口から飛び出したのは「あなたはなんで」とか「信じられない」とか「傘を突っ込む前に相談すればいいでしょう」とか、いわば当たり前のことばたちであった。そんなキャラじゃないだろう、中くらいな人は。衝撃すぎて、かたまる私。とりあえず、反省している感じで、ちーんな雰囲気を醸し出しつつ離れたところに移動、そしてさりげなく観察を開始した。

キッチンと自室とを行ったり来たりしていたと思ったら、中くらいの人は秘密兵器を携えて現れた。40cmと30cmのものさしをテープで貼り合わせたシロモノ。作り手が不器用な中くらいの人なので不安はあるが、我が家最長最薄であることは、間違いない。それでもってしばらくしゃこしゃこやったら、チュー某はわりとあっけなくこちらの世界に戻ってきた。

そうして、中くらいの人は、自分の偉業をアピールするでもなく、思いの外ドライであった。もしかしたら、鼻息ぐらいは荒くなっていたかも知れないが、大人の対応を貫いていた印象を受けた。ここだけの話、むしろ子どもじみていたのは、こっちである。これは、もしや俗に言うおかん超えなのか。これを機に、私は怒られまくって、今までの恨みを晴らされまくるのか。乞う、ご期待?

夕方、ふたりで一本のチュー某を分けて食べた。色は、みどり。それが、あのお騒がせチュー某なのか、別のチュー某なのかは詮索しないでおく。