駅までの道の途中に犬を飼っているお宅がある。もう何年も何年も通っているというのに、その犬に吠えられることが度々あり、しかもその吠え方が尋常ではないため、心の中で「だめ犬」と呼んでいた。ただ、いつも吠えられるわけではないのは何故だろうと気にはなっていた。
それが、最近になって、犬が吠えたあとにはたいてい飼い主（おばあさん）が「こら！」と窘めていることに気づいた。おそらく、犬は、飼い主がそばにいる時にだけ吠えていたのだ。「ばあさん、見ろ。俺はとても役に立つだろう」と誇らしそうにプレゼンしていたのだ。逆に、飼い主に見られていない時は怠けていたわけだ。なんてしたたかな犬。私は「だめ犬」と呼ぶことをやめた。新しい呼び名は、まだ決まっていない。
