途方に暮れなずむ

途方に暮れていたり、いなかったり。

薄味の運命

どれだけひっそりと暮らしていても、驚くような出来事というのは起こり得る。

普段、中くらいの人と二人で生活していて、運転技術はペーパードライバーに毛が生えた程度、その上すっかりステイ・ホーム癖がついてしまった私の行動範囲は知れている。

雨井さんと買い物に出かけた時のこと。ずらりと陳列した植物を見ていたら、お店の人が話しかけてきた。そして、顔を上げると、そこに知った顔があったのだった。例の、閉店してしまった洋服屋の元店長さんだった。

出会いは10年ほど前。異動やら何やらで付き合いは1年程度だったように記憶している。それでも、その数年後に思いもよらぬところで鉢合わせし、それが今回また起こったのだ。あまりに行く先々に現れるので、向こうからしたら、私たちはストーカーめいた存在に見えているかも知れない。少し不安にもなるが、正々堂々カミングアウトして(実は私はそのままやり過ごそうかと思ったが、雨井さんが最後の最後で打ち明けた)、昔話をして別れた。

元店長と雨井さんのベルトがお揃いで、無くなってしまったあのお店を思ってしんみりした。

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