途方に暮れなずむ

途方に暮れていたり、いなかったり。

ついたての向こうに

青山美智子『お探し物は図書室まで』読了。

特に前評判等目にせず、耳にせず、書店の話題本コーナーでたまたま手に取った一冊。

一日に一章ずつ、大切に読んだ。読後、ひとこと「好きだわー」とぎゅっとかき抱きたくなるような、そんな感情が芽生えたのはいつぶりだろう。(ちなみに、最初の一冊は、12、3歳の頃に読んだ山田詠美の『放課後の音符』でした)

20〜60代の立場の異なる男女が、導かれるようにしてたどり着いたのは、羽鳥コミュニティハウス内の図書室。そこで迎えてくれるのは、若くて笑顔のかわいい司書補の森永のぞみちゃんと、司書の小町さゆりさん。

このさゆりさん、それぞれの章の主人公たちの言葉を借りれば、「『ゴーストバスターズ』に出てくるマシュマロマン」だの「早乙女玄馬のパンダみたいな人」だのと、存在感が半端ない。そして、とってもいい仕事します!こんな人が実在してくれたらなあ、と思わずにはいられない。

個人的に、さゆりさんが『北斗の拳』のケンシロウになりかわってドスの利いた声でつぶやく名ゼリフ(の、アレンジ版)と、最終章で65歳の正雄さんが葉桜の生い茂る公園で妻にきかせる「正雄のうた」がたまらなく好きだ。

ちなみに、本の表紙、積まれた本のそばに置いてある羊毛フェルト作品は、さゆりさんが5人の主人公たちに渡した本の付録。これらの付録が果たすあたたかな役割を確認するのも楽しい作業となるはず。さゆりさんと知り合った主人公たちがどのような一歩を踏み出すのか。是非、ご一読を。

 

お探し物は図書室まで

お探し物は図書室まで