途方に暮れなずむ

途方に暮れていたり、いなかったり。

チュウイングな人

自分がガムで風船を膨らます様子を見守るように、と中くらいの人から命じられた。

正直なところ、中くらいの人は少々アレだ。ここだけの話、不器用さんなのだ。つまり、任命された時点で間違いなく長丁場になることが約束されたのである。案の定、中くらいの人の口が繰り出すものは、全くもって風船ではない。惜しさすらない。コンディションを整え、送風(この風を真正面で受け続ける身にもなって欲しい)、コンディション、送風、、、の繰り返しを何度か見守ったところで、訊いてみた。

「できたことあるの?」

すると、それはそれはこの上なく迷惑そうな顔で、さっきまではできていたと言う。迷惑なのはどちらか今一度考え直して欲しい、と思いつつも、引き続き見守る。

お互い疲れてきたため、ここぞというタイミングで中くらいの人に手をあげてもらうことを提案した。手があがるまでは、編み物をすることを許された。そこからは、恐らく4回に1回程度の見守りとなった。

そして、ついにその時が来た。中くらいの人の口からピンクの風船が生まれ、弾けた。一瞬だった。唇に薄くガムがはりついた中くらいの人は、えらく勝ち誇った顔をしていた。「見た?」と訊かれたので、「見た」と伝えた。よかった。

よかったが、中くらいの人は、宿題やら、お風呂やら、本来優先順位が高いこれらのタスクに使うべき時間をかなり浪費してしまったことに気づいていないのだ。そこは、とてつもなく残念でもある。